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人類を核の脅威に導いた天才科学者の苦悩【オッペンハイマーレビュー】




オッペンハイマー

2024年製作

 3.8

レビュー

「我々は世界を破壊した」

第二次世界大戦中に発足した原子爆弾開発プロジェクト、通称マンハッタン計画のリーダーを務める、天才物理学者のオッペンハイマー

本作では、彼の人柄や生い立ち、原子爆弾開発に携わる上で祖国に貢献したい気持ちと、軍拡に進む世界への懸念の間に板挟みとなった、天才物理学者の生涯を描いています。

1900年代前半の欧米諸国では「ナチス・ドイツ」と「共産主義」が脅威とされ、その脅威であるナチス・ドイツ」が核分裂技術を発見したことを受け、「ナチス・ドイツ」に先回りして原子爆弾を開発しようマンハッタン計画が立ち上がりました。

その計画のリーダーに抜擢されたのは、量子力学などの物理学で名を馳せていたオッペンハイマー。本作では、実験より理論を立てることが得意なところから、女性関係まで、彼の素性を丁寧に描いています。


特に印象的だったのは、8月6日の広島への原爆投下のアメリカ側の視点
元々は脅威であるナチス・ドイツ」に対抗するために開発を進められていた原子爆弾が、いち早く日本を降伏させるために使用されていたこと。

しかし脅威を目にしたオッペンハイマー氏は、日本への原爆投下について「技術的には成功した」という表現に留め、水爆の開発に反対していることから、彼の罪悪感が伺えます。


本作では、天才科学者の頭脳と心を五感で感じさせる“没入体験”を目指し、「様々な観点から私たちはオッペンハイマーの精神の中に潜り込み、観客を彼の感情の旅に連れ込もうと試みた」といいます。

「祖国のために貢献したい」という想い核分裂核融合の分野の進歩を大きく進めた一方で、人類を核の脅威に導いてしまったオッペンハイマー氏の功績と苦悩。

それを是非体験してみてください。


あらすじ

第二次世界大戦中、アメリカで極秘に進行したマンハッタン計画に参加した科学者J・ロバート・オッペンハイマーは、世界初の原子爆弾を開発。その使用の結果に苦悩し、冷戦や赤狩りの時代に翻弄される。彼の栄光と没落を描き、現代に問いかける物語。

作品情報

オッペンハイマー

  • 上映日:2024年3月29日
  • 製作国:アメリカ、イギリス
  • 上映時間:180分
  • ジャンル:ドラマ、伝記
  • 配給:ビターズ・エンド

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