レビュー
これはポケモンに育てられた少年ココが起こす奇跡の物語。強さを武器に、ジャングルにいるポケモンを支配していたザルードたちと、文明の発展と欲望でジャングルの自然を破壊する人間。異なるようで、自分のことしか考えていない『正義』という点で共通する両者は、ココとココを育てた一匹のザルードによって、それが間違いだったと気付かされます。
ビーガンなど環境保護への機運が高まりつつある今の世の中で、【生物多様性】を描いたこの作品は、世界中へのメッセージになるでしょう。
物語は、赤ん坊で捨てられていた1人の人間《ココ》を育てるため、縄張りに他の生き物を入れてはいけないというザルードの掟を破り、ザルードの群れから外れることを決めた一匹のザルードの決断から始まります。
サトシやロケット団、各種ポケモンの登場で、ポケモンファンも楽しめる一方、映画で初登場するザルードやココを主軸としたストーリー展開で、ポケモンに詳しくない人が見てもストーリーに入り込めるようになっていて、20周年の歴史を持つポケモンの映画が新しい境地に突入したんだと改めて感じました。
さらにグッとくるシーンが、ココとザルードの親子のシーン。ザルードとして育てられてきたココは、サトシと出逢い、自分が人間なのかザルードなのか分からなくなったときの親子の掛け合いや、ザルードが戦いで疲弊し瀕死状態になったときに起こすココの奇跡、ココの旅立ちを素直に応援できない父親らしいザルードの姿ーーー。
ポケモンという世界中の子どもたちから愛されている世界観を通じて、親子の絆や生物多様性を描いた、「ポケットモンスターココ」は、大人が観ても泣ける作品だと思います。