レビュー
これまで観てきたドキュメンタリー作品の何よりも衝撃的でした。
というのも、日本でよく放送されているドキュメンタリー番組では、制作時間やコストの都合上、再現VTRがよく使われますが、この映画では再現VTRは一切使われていません。
すべてリアルを撮影した映像データと、少しのアニメーションの挿絵で構成されています。
とは言っても、固苦しい映画ではなくて、
・牧師の援助のもと脱北する家族のシーン
・先に脱北して韓国で暮らす母が、息子の脱北のためにブローカーと連絡を取るシーン
・脱北者で韓国で啓蒙活動をしている活動家による北朝鮮の現状解説シーン
・アニメーションによる状況説明
などの映像がテンポよく配置されて、最後まで飽きずに見れました。
ただ、北朝鮮の過酷な現実を知れば知るほど涙が出てきて、冒頭から涙目になっていました。
脱北者全員、祖国が「ユートピア(楽園)」だと信じきっていて、脱北すること自体、処刑(拷問)されることから逃げるための手段でしかないというのも悲しい現実です。
最後に全体を通して感じたのが、企画編集した監督や撮影したスタッフが命をかけてでも伝えたいという覚悟。
僕自身、8年前から「自分が見聞きしたことを伝えられる媒体を作ろう」と思い立って、KENFEE.COM を立ち上げ、今日に至るまで取材活動を続けてきましたが、
その覚悟を目の当たりにして、もっとやれることはあるのではないかと痛感させられました。
脱北に成功した80歳のおばあちゃんの「この歳でここ(韓国)に来てもおしゃれは楽しめないね」という言葉や、50代男性の「ここに来れたこと自体ありがたいけど、50年間もったいないよ」という言葉に胸を強く打たれました。